三菱UFJフィナンシャル・グループの仮想通貨
三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)が開発を進めている仮想通貨「MUFGコイン」について解説します。大手金融機関にとっても仮想通貨が無視できない存在になっているのは確かなようです。
MUFG以外にも仮想通貨ではないですが独自コインの開発を進めている大手金融機関が何社かあります。例えばみずほフィナンシャルグループのデジタル通貨「Jコイン」がそうです。
当初は3メガバンクや地銀などでデジタル通貨を一本化する動きもあったそうですが折り合いが合わず現在はMUFGコイン、Jコインそれぞれで独自に開発を進めている、という背景があります。(3メガバンク:三菱UFJ、みずほ、三井住友)
仮想通貨とデジタル通貨という中身の違うものを一緒にできるのかわかりませんが、あとで相互に交換できるようになればいいですけどね。
今回はブロックチェーン技術を利用した仮想通貨という括りのMUFGコインについて見て行きたいと思います。
MUFGコインの開発状況
では今MUFGコインはどのような開発段階にあるのかと言うと、2018年6月までMUFG社内のカフェやコンビニエンスストアでQRコード決済を利用した実証実験が行われています。これはレジを通さず顔認証とAIで自動支払いする仕組みなんだそうです。
三菱UFJフィナンシャル・グループの2018年3月期決算説明会(2018年5月18日)資料の中(31ページ目)にMUFGコインの事が小さく載っていました。
https://www.mufg.jp/ir/presentation/backnumber/pdf/slides1803.pdf#page=31
一般リリースは19年度中を目指すということです。それにしても小さい記事笑。
MUFGコインの大きな特徴
さてMUFGコインには大きな特徴が2つあります。それは、
- 中央集権的な仮想通貨である
- 価格が1 MUFG=1 円で調整される
ということです。
一般的にビットコインに代表される主要な仮想通貨は
- 非中央集権的
- 価格変動制
ですがからビットコインとは真逆の性質をもっている仮想通貨という事がわかります。
この2つについてそれぞれどういうことなのかちょっと掘り下げて見て行きたいと思います。
中央集権的な仮想通貨である
まず非中央集権的仮想通貨とは何かと言うと、管理者のいない仮想通貨です。
新規のコインはネットワークに繋がった世界中のマイナーによって採掘され、一番早く計算したものに対してのみ与えられる方式をとっています。そしてその仮想通貨をどのように展開していくかはネットワーク参加者全員で決めていくのです。(ネットワーク内で考えがまとまらないとその通貨は分岐します。)
一方、中央集権的仮想通貨とはどんなものなのでしょうか。
管理者がいて、発行枚数やロードマップを管理者が決めていきます。つまりMUFGコインの場合はMUFGがすべてを掌握している管理者ということになります。何か物事を決めて進める際には管理者の能力に大きく左右されるという事にもなりますが、能力が優れていれば決断も早く物事がスピーディに進められるメリットがあるのです。3大メガバンクの一角をなす三菱UFJですから能力を大いに発揮されるのではないでしょうか。
価格が1 MUFG=1 円で固定される
既に仮想通貨の中には価格が一定に維持されているものがあります。例えばTether(テザー:略号USDT)です。この仮想通貨は「ドル」に固定されているペッグ通貨で1USDT≒1USDになるように調整されています。
これと同様に「円」で実現させようとするものがMUFGコインです。
ではなぜ価格を固定させるのでしょうか。
仮想通貨、中でもビットコインは元々従来からある送金の問題を解決するために作られたものです。送金問題とは、
- 送金手数料が高い
- 送金に時間が掛かる
この2点。
現状はこれらの問題を解決するというよりは投機目的で売買されているのがほとんどです。その為ビットコインなどの仮想通貨は価格が乱高下することが多く安定には程遠い。つまり現時点で送金には向いていません。
一方MUFGコインは何をしても1 MUFG=1 円です。1億円分買ってもそれはいつまでたっても1億円の価値ということです。このように価格が固定されているものをペッグ通貨というそうですが、投機的な部分はありませんし、送金に使う事によってしか価値を生み出さないものと言えるのかもしれません。
また MUFGと 円は自由にいつでも交換できないといけません。1000円で交換した1000MUFGは別の日に1000MUFGから1000円に交換できないといけません。MUFGコインがどのような発行形態になるのかわかりませんが、交換に関してのみ言うと、例えば全てのホルダー(保有者)が一斉に持っているMUFGを円に交換することがあったなら、その交換所は全発行分の円を、当たり前ですが、持っていて交換にも対応できないとダメです。信頼のおける交換所である必要があります。
MUFGコインの上場する場所はたぶんMUFGが作った交換所になると思いますが、MUFGという大きな後ろ盾があれば万が一の事態にも耐えられる体力がありそうですね。
まとめ
今後の3メガバンクの動向がすごく気になります。連携するのか別々の道を歩むのか。大手銀行が手掛けるこれらの仮想通貨やデジタル通貨がうまくいけば、送金がスマホでピッピッで終わる時代に。
人件費も抑えられるだろうし、ATMなどの機械も不要で設備投資もいらないとなれば、かなりのコスト削減効果も期待できそうです。銀行にとってもこれはやらない手はないということなんですね。
ではまた〜!